この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。
アントシアニンは眼精疲労に効果がある?
情報技術の進歩により、パソコンやスマートフォン、テレビなどを長時間見る機会が増えてきました。また仕事のストレスなどにより目に対して負担がかかり、眼精疲労やドライアイになる人が多くなってきています。これらの症状は視力の低下だけでなく、頭痛や肩こり、時には吐き気などを引き起こすこともあり、生活の質を下げることにもなりかねません。
軽度のものなら休ませると回復することが多いですし、病院に行かずに目に良い食べ物を摂取したりして対処することでしょう。そして目に良い食べ物と聞いて思い浮かべるのは「ブルーベリー」という人が多いのではないでしょうか。それだけブルーベリー=目に良いというイメージが浸透していますが、本当にブルーベリーは目に良いのでしょうか。
結論からいうと、ブルーベリーが目に良いというのは間違いではありません。もっと具体的にいうと、ブルーベリーに含まれるアントシアニンが目に良いということがわかっています。
実はこの事実が発覚したのは50年以上も前のことで、とある人物の論文により発表されました。では、アントシアニンの何が目に良いのでしょうか。
よくいわれているのは、抗酸化作用が強く、老眼になるスピードを遅くしてくれるということです。ですが、もっと大きな理由として考えられるのは、アントシアニンがロドプシンの再合成を促す働きを持っているということです。
ロドプシンは網膜にある細胞の中にある色素体で、目を酷使することで再合成が追いつかずに目が見えにくくなります。
また、パソコンなどのディスプレイを使った作業をしている人が、毎日ビルベリーエキスを摂取したところ、目のかすみ、痛み、眼精疲労などの症状が軽減されたという実験結果もあります。ただし、疲労を機器などで数値化することは難しく、被験者の体感による結果ということになり、それが実験結果の信ぴょう性を下げているということはありそうです。
ですが、これ以外にも50年以上数多くの実験が行われており、現在でもこの説は否定されていないことから考えても効果はあるといえそうです。
眼精疲労の原因
眼精疲労は気づくと起こっている症状です。疲れがどんどん蓄積されて、やがて自覚できるようになってきます。できれば自覚症状が出てくる前に対処しておくのがベストですので、そのために、なぜ眼精疲労が起こるのかということを知っておきましょう。原因を知ることで、予防にもなります。
・目を酷使することによる疲労
現代において一番多い原因だと考えられているのは、パソコンやスマートフォンなどの画面を長時間見続けることによる眼精疲労です。
一点を見続けると目に大きな負担がかかりますし、画面から発生するブルーライトと呼ばれる光は、眼精疲労の原因になっています。
・メガネやコンタクトが合っていない
メガネやコンタクトが自分に合っていないために眼精疲労が起こることも原因のひとつとして考えられます。
最近はメガネやコンタクトレンズを、ネットショッピングでも買うことができるため、自分に合っていないものを使用している人も多いです。眼科に行って視力やベースカーブなどをしっかり検査してもらい、自分に合ったものを使用することで眼精疲労の予防・軽減をすることが可能です。
・何らかの目の病気になっている可能性も
もうひとつの原因として考えられるのは、何らかの病気が原因となって眼精疲労を併発していることです。
ドライアイなどの軽いものもありますが、緑内障、白内障などを発症している可能性もありますので、ただの目の疲れだからといって侮ってはいけません。
【ドライアイ】
ドライアイは涙の量が減ったり均一に流れなくなったことにより、目の角膜が乾燥から保護されなくなる病気です。コンタクトレンズを頻繁に使用したり、パソコンやスマートフォンなどの画面を見続けることにより起こります。ドライアイになったことが原因で、眼精疲労を併発することもあります。
【緑内障】
緑内障は視神経が何らかの原因により障害され、目と脳をつなぐ神経繊維が徐々に減っていき、その結果視野が狭くなっていく病気です。治療をせずに放置したり怠っていると、失明する可能性もあります。日本での失明の一番の原因になっているため、恐ろしい病気でもあります。緑内障を発症する人は眼圧が高いことが多く、眼痛や頭痛が起こることがあります。
【白内障】
白内障は目の水晶体が白く濁り、視力が低下したり、眩しさを感じたり、視界が暗くなったり白くかすんで見えたりする病気です。ものが見えにくくなるため、それが原因で眼精疲労を起こすことがあります。白内障は多くの場合、加齢に伴って発生するのが一般的で、緑内障と同じく失明の可能性がありますが、放置しなければ失明することはありません。
治療については日帰り白内障手術が普及してきており、以前のように患者に負担がかかることは少なくなりました。この手術の影響によって見え方が変わり、それが原因で眼精疲労になることがあります。
・目以外の病気による影響
一見目とは関係なさそうな病気でも、眼精疲労を発生させることがあります。身近なものだとかぜやインフルエンザなどがありますが、ほかには自律神経失調症、更年期障害、鼻や耳の病気が原因になることもあります。
眼精疲労の原因にもなるブルーライトとは?
最近のパソコン、スマートフォン、テレビの画面には、LEDのディスプレイが採用されています。LEDディスプレイには赤・青・緑の三原色が使われており、それによりフルカラーで表示できるようになっています。
ブルーライトはそのうち青色の光で、人が見ることができる光(可視光線)の中でももっとも波長が短く、強いエネルギーを持っているために、水晶体や角膜を通り抜けて網膜まで到達します。
紫外線にも似た光でもあるため、目を疲れやすくさせる原因となっているのです。
・画面の青色を下げる
大抵のパソコンやテレビには色合いを調整する機能がついています。青色を下げることでブルーライトを減らすことができます。スマートフォンの場合は、機種によってはワンタッチで色を変える夜間モードなどの機能がついたものがあります。もしそういった機能がない場合でも、切り替えるためのアプリなどもありますので、有効活用しましょう。
・画面の明るさを調整する
画面の青色を下げる以外にも、明るさを下げることでもブルーライトを軽減することができます。調整するときには画面の白い部分を見ながら調整すると、適切な明るさにできます。白い部分が蛍光灯のように眩しく感じるなら明るすぎで、ぱっと見で暗くて文字が見えない状態だと暗すぎです。暗くしすぎても逆効果になりますので、気をつけましょう。
・ブルーライトカットグッズを使用する
画面を調整せずにブルーライトをカットしたいという人のために、パソコン、スマートフォン専用の、画面に貼り付けるタイプの液晶フィルムが売っています。ブルーライトをカットできるメガネやサングラスもありますので、パソコンなどを使用する時だけ着用するという方法もあります。
眼精疲労を改善・予防するには
眼精疲労を改善するには、原因となっているものを取り除くことが第一ですが、仕事でパソコンを長時間使う必要がある人など、できないこともあると思います。そういう場合でも少し工夫をすることで、目にかかる負担を減らして眼精疲労を改善することができます。
・目を休ませる
目は長時間の負担により疲労していきます。適度な休憩を挟んで目を休ませることで、疲労の蓄積を抑えることができます。また、パソコンの使用中も、まばたきを意識的に行うことで渇きや疲労を抑えます。
・パソコンのモニターを目線より下に
パソコンを長時間使う必要があるなら、画面を目線より下にすることで疲労を抑えることができます。目線より上だと上目づかいになってしまい、疲れやすくなったり目が渇きやすくなります。また、モニターが光沢のあるタイプだと光の反射で見えづらくなりますので、反射しないように角度を調整するか、非光沢のフィルムなどを貼りましょう。
・文字の大きさを変える
パソコンやスマートフォンを使う時は、文字の大きさを大きいものに変えると良い場合があります。文字が小さすぎて見えにくい場合、画面に近づきすぎてしまい目に負担がかかる原因になります。姿勢が悪いことも肩こりや頭痛が起こり、疲労の原因になりますので、フォントの調節も試してみましょう。
眼精疲労に効く食べ物
目に良いといわれている食べ物は、ブルーベリーやビルベリーのほかにもたくさんありますが、その中でも一般的で摂取しやすい食材を紹介していきます。
【ルチン】
ルチンは植物に含まれる色素成分フラボノイドの一種で、毛細血管を強化する効果があり、目の血流を良くすることにより、眼精疲労などの負担を軽減します。ルチンが含まれる食品としてはそばの実がもっとも有名です。そのほかにはアスパラガス、グレープフルーツやレモンなど柑橘類の皮、クランベリーなどに含まれています。
【ルテイン】
ルテインはルチンと名前がよく似ていますが、別物です。人の目の水晶体や黄斑部(おうはんぶ)に多く存在しており、目の疲労を和らげたりブルーライトの影響を抑えて、網膜を守ってくれる働きがあります。ルテインは人が自身でつくり出すことはできないため、食材から摂取する必要があります。ほうれん草、にんじん、ブロッコリー、かぼちゃなどの野菜に多く含まれています。
【ビタミンA】
ビタミンは人にとって必要な栄養素のひとつです。ビタミンにもたくさんの種類がありますが、一番目に良いのはビタミンAです。ビタミンAには粘膜を健全に保つ働きがあり、目の角膜などにも効果があります。ビタミンAが多く含まれているのは、モロヘイヤ、大根、にんじん、パセリ、うなぎ、レバー、卵黄、乳製品などです。ビタミンAは油に溶けやすい性質があるため、野菜炒めなどの料理だと効率的に摂取できます。
【ビタミンC】
一般的には美容の効果があるとされているビタミンCですが、目の疲れや充血を緩和する効果があります。グレープフルーツ、オレンジ、レモンなどの柑橘類や、キウイ、イチゴ、ほうれん草、ブロッコリー、ピーマン、明太子などに多く含まれています。
ビタミンCには、コラーゲンの合成を助ける働きもありますので、一緒に摂ると効率的です。水晶体にはコラーゲンがあり、コラーゲンが十分行き渡ると、白内障の改善や予防に役立つといわれていますので、結果的に眼精疲労にも効果があります。また、抗酸化作用もありますので、老眼になるスピードを遅くしてくれる働きも期待できます。
【ビタミンE】
ビタミンEは血行促進効果がありますので、目の血流を良くして眼精疲労を緩和し、酸素や栄養を多く届けて健康を保ちます。アボカド、アーモンドなどのナッツ類、ブロッコリーなどの緑黄色野菜、穀物、ひまわり油、大豆などに多く含まれています。ビタミンCと同様に抗酸化作用があり、一緒に摂取することで作用が高まります。
紹介したもののほかにも目に良い食材はたくさんありますが、これらのものばかりを摂るのではなく、基本的にはバランス良く摂取していくことで目以外にも効果があります。過剰摂取や偏りにはくれぐれも気をつけましょう。
まとめ
ブルーベリーなどに含まれるアントシアニンは、一般的にいわれているように目に良いといえます。ですが、ブルーベリーやビルベリーが目に良いといっても、野菜などの食材のように手に入りやすい訳でもありません。食材を摂取することによる恩恵を得るには、継続的に摂取することが一番ですから、手軽に毎日摂れるサプリメントがおすすめです。
眼精疲労は、直接失明などの重い病状につながることは少ないですが、生活の質を下げることにもなります。
今回ご紹介した改善方法や予防方法を実践して、快適な生活を送りましょう。