この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
ブラジルのリオグランデドスル・カトリック大学認定の自然療法専門医。アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得しており、専門医として自然由来のサプリメントに関する知識と精密な現代科学のデータを組み合わせて診断や治療を行っています。自身のフィットネスインストラクターとしての16年間の経験を活かし、多くの患者が抱える肉体的な問題だけでなく、精神的な問題も含めて、自然由来のサプリメントを用いた新しい“先見的な予防医学”にも注力しています。
爪水虫とは?足水虫とは何が違うの?
爪水虫とは、その名の通り「爪にできた水虫」のことです。一般的な水虫は、足の裏や指の間の皮膚に真菌(白癬菌)というカビが繁殖して起こりますが、爪水虫の場合にはこの白癬菌が爪の中に入り込んで「爪の下部」に住みつくことで発症します。
爪水虫は主に、爪の白濁、厚みを増す、ボロボロともろくなるなどの症状が特徴的です。
白癬菌は、高温多湿な場所を好み、ケラチンと呼ばれるたんぱく質の一種を養分として増えていく菌です。爪には、このケラチンが豊富に含まれているため、格好のすみかになってしまうのです。
特に、足の指は靴や靴下などによって蒸れやすく、水虫菌の温床になりやすい場所のひとつです。そのため、爪水虫になってしまったら放置していても自然治癒することはありません。
また、白癬菌以外の「カンジダ菌」などによって爪水虫が起きることも珍しくなく、指や爪の見た目だけで「爪水虫である」と診断することは困難です。
爪水虫の確定診断では、爪が厚くなったり白くなったりしている部分を削って、顕微鏡で白癬菌またはカンジダ菌の有無を調べる必要があります。
爪水虫は、指の爪単体で起こることもありますが、もともと足裏や指、手などに感染した水虫を放置した結果、白癬菌が皮膚から爪の中に侵入し発症するケースも珍しくないといいます。
爪水虫とよく似た指や爪の病気も数多く存在するため、素人判断で爪水虫だと判断することは危険です。指の爪に異変を見つけた場合には、皮膚科医へ相談するようにしましょう。
爪の組織は通常の皮膚と異なり、かなりの厚みがあります。そのため、ローションやクリームなどの抗真菌薬を塗布しても患部に薬効成分が行き届きにくく、一般的な足水虫よりも治りにくいといわれています。
特に、小指や薬指と比較して面積が広く、さらに厚みがある「親指の爪水虫」は治療期間が長引く傾向があるので、根気よく爪水虫と向き合っていくことが大切です。
ただし、爪水虫は治らない病気ではありません。適切な治療を継続すれば完治させることができる感染症のため、諦めずに治療を行っていきましょう。
足の指にできる爪水虫の症状
足裏や指の間にできる水虫の場合、かゆみや皮剥けなどのわかりやすい症状が出るので、「もしかしたら水虫になってしまったかもしれない」と、早い段階で気づく人が多いです。
しかし、爪水虫では自覚症状がほとんどないため、治療のスタートが遅れてしまう傾向がみられます。
爪水虫を発見するためには、自分の足の指や爪をしっかりと観察することが大切です。爪水虫の症状には、いくつかの種類があります。
なかでも多くみられるのは、「遠位・側縁部爪甲下型」と「白色表在型」です。
遠位・側縁部爪甲下型の場合には、白癬菌が爪のサイドや先端から入り込み、爪がもろくなってポロポロと欠けるようになります。
白色表在型では、白癬菌が爪の表面から侵入し、爪の表面が白く濁ります。
その他、爪の付け根から白癬菌が侵入して起こる「近位部爪甲下型」は、爪の甘皮部分(爪の付け根)から変色し、進行スピードが他の爪水虫より早いといわれています。
これらの爪水虫を治療せずに放置していると、爪全体が白濁したり厚みを増して変形したりする「全層異形成型」へ悪化することも珍しくありません。
爪水虫が進行すると、歩くたびに足の指へ痛みが走ったり、爪自体がはがれ落ちたりするケースも多いです。
全層異形成型の爪水虫になってしまった場合には、治療に何年もの時間を要するため、「もしかしたら爪水虫かもしれない」と感じた際には、恥ずかしがらずにできるだけ早めの皮膚科受診をおすすめします。
爪水虫で指に痛みが出ることはある?
前述した通り、爪水虫の症状が進行すると指に痛みが出ることも少なくありません。
特に、爪全体が白癬菌に侵されてしまった状態では、爪の厚みが正常時の何倍にも増して、歩行時に違和感を覚えたり、強い痛みが走ったりすることも多いといいます。
また、爪水虫が悪化することによって二次感染を起こし、足の指の炎症や腫れがみられる患者さんもいます。「靴を履くときに指が痛い」「歩行時の痛みがつらい」といった自覚症状がある方は、爪水虫がかなり悪化している恐れがあるため、早めの治療を行いましょう。
日本では「水虫は恥ずかしい」といったイメージが強く根付いているせいで、受診しようとしない患者さんもかなり存在します。これは、男女問わずいえることですが、特に若い女性の場合にはその傾向が強いようです。
20年以上も爪水虫を治療せずにそのまま放置し、「全ての指の爪が白癬菌でボロボロになってしまった」「痛みのせいで歩行が困難になってしまった」という人もいるほどです。
爪水虫をはじめ、足水虫などの白癬菌による感染症は、放置していても自然治癒を期待することはできません。必ず、医師の診察を受けて塗り薬や飲み薬で治療を行うようにしてください。
爪水虫と間違えやすい指の病気にはどんなものがある?
爪の変形や変色、肥厚などを引き起こす病気には、爪水虫以外にもさまざまな種類があります。
そのため、素人が肉眼で判断するのは難しく、皮膚科などの医療機関で適切な検査を受ける必要があるのです。
爪水虫と間違えやすい指や爪の病気には、カンジダ性爪真菌症、爪乾癬(つめかんせん)、爪異栄養症(つめいえいようしょう)、爪甲鉤彎症(そうこうこうわんしょう)などがあります。
カンジダ性爪真菌症は、前述した通り「爪水虫」に分類されることもある感染症です。カンジダというカビ(真菌)が爪内部に入り込むことで、爪がボロボロと欠けたり、爪周辺が赤く炎症を起こしたりします。
爪乾癬は、一見「爪水虫」のようにも見えますが、白癬菌による感染症ではありません。爪が白濁する、表面が点状に凹む、剥離するといった症状が一般的です。
皮膚に起こる乾癬という病気が、爪に生じたものだといわれています。
爪異栄養症の場合には、爪に裂け目ができたり、縦筋や溝が発生したりします。爪の発育不全により爪全体が白っぽく濁ることも多く、やはり見た目だけでは爪水虫と区別することは困難です。
爪甲鉤彎症は、外反母趾で悩む女性に多くみられる病気です。爪が羊の角のように変形・湾曲し、見た目が良くないだけでなく、歩行にも支障をきたします。その他、外傷、爪水虫の悪化によって引き起こされるケースもあります。
50代以降になると増加してきますが、20代などの若い人でも注意が必要です。
その他、きつい靴を履き続けた際や、爪の外傷によって白色や黒色に変色することもあります。「爪水虫かもしれない」と一人で悶々と悩み続ける前に、しっかりと検査をしてもらうようにしましょう。
爪水虫があると指や足の裏にも菌がいるって本当?
爪水虫のほとんどは、長年足の水虫を放置することによって、白癬菌が爪内部に侵入して起こります。
そのため、爪水虫があれば足裏や指の間にも白癬菌がいることは決して珍しくありません。
稀に、白癬菌が爪部分だけに感染するケースもありますが、早期治療を行わずに放置していると、他の部位にも菌が広がってしまいます。
爪水虫の治療を行う際には、足裏や指間の水虫も同時に治療しなければなりません。
日本で行われた大規模疫学調査によると、皮膚科を受診した5人に1人が足の水虫にかかっており、さらに10人に1人は爪水虫に感染している可能性があるといった結果が出ています。この調査結果から計算すると、およそ2400万人もの日本人がなんらかの水虫にかかっているのです。
日本は、梅雨があることから湿度が高めの気候で、カビ(真菌)にとっては絶好の環境です。また、長時間労働による足の蒸れ、靴内の環境悪化なども多く、働き盛りの人ほど水虫になりやすいといえるでしょう。
最近では、女性の水虫も急増しています。その背景には、通気性の悪いブーツやパンプスによる蒸れが大きく関わっているようです。
指の爪水虫は市販薬で治るのか?
水虫の市販薬はさまざまなメーカーから販売されています。ドラッグストアや薬局にも、水虫専用コーナーが設置されているほどです。
スプレータイプやクリームタイプなど、そのラインナップも豊富です。
しかし、これらの水虫薬は通常の足水虫への効果は期待できますが、爪水虫を根治させることは困難だといわれています。
爪水虫は爪の奥深くに白癬菌が潜んでいるため、薬剤を患部に届けることができないのです。
本気で爪水虫を治したい場合には、皮膚科で飲み薬や爪水虫専用の塗り薬を処方してもらう必要があります。
爪水虫の治療方法
爪水虫は、一度発症すると治りにくい感染症ですが、根気よく治療を行えば完治させることは可能です。
重症化すると治療期間もそれだけ長引くことになるため、早めに爪水虫の治療を開始しましょう。
医療機関を受診して「爪水虫の確定診断」を受けた場合には、主に抗真菌薬と呼ばれる薬が用いられます。この抗真菌薬には、塗り薬(外用薬)と飲み薬(内服薬)の2種類があり、症状や体質に合わせて併用しながら治療を進めていくのが一般的です。
抗真菌外用薬は、爪のピンク色の部分(爪床)からも薬剤が爪内部へ入り込み、薬液やクリームが浸透しにくい爪の深層部の頑固な爪水虫に効果を発揮します。
飲み薬には、イトラコナゾールやテルビナフィンと呼ばれる薬がありますが、テルビナフィンは肝障害を起こすこともあるため、服用の際は定期的な血液検査を行わなければなりません。
テルビナフィンで爪水虫の治療を行う際には、1日1回1錠を半年程度服用し続けます。
また、イトラコナゾールの場合は1週間服用をして、その後3週間薬をお休みするサイクル(パルス)を3回繰り返す「パルス療法」を行います。
肝臓が悪い患者さんの場合には内服薬を使用せず、浸透性の高い外用薬のみで爪水虫の治療を行うことも少なくありません。
最近では、爪への浸透性が非常に高い治療薬(クレナフィンやルコナック)も開発され、肝障害が心配される爪水虫患者さんの治療も選択肢が増えています。
爪が伸びる速さは、手の爪で1か月に3mm程度、足の爪で1.5㎜といわれており、完全に生え変わるには1年以上の治療が必要です。
爪水虫の治療を途中でやめると、爪の中に残っている白癬菌が再び増殖するため、治療がふりだしに戻ってしまいます。時間も薬剤費用も無駄になってしまうのです。
爪水虫を完治させたいと思っている患者さんは、根気強く治療に向き合っていきましょう。
爪水虫の予防方法
爪水虫は、普通の足水虫と同様に感染する病気です。直接的な接触だけでなく、飲食店の座敷や座布団、プール、銭湯、スポーツクラブ、ヨガスタジオなどでは白癬菌に感染する恐れがあります。
もちろん、白癬菌自体が肌についただけではすぐに水虫として発症しません。
さまざまな説がありますが、24時間以内に洗い流せば皮膚や爪の中まで菌が侵入してくることはないといわれています。
水虫の患者さんが使用したバスマットや床、スリッパなどに接触した可能性があるときには、できるだけ早く足を洗い流すようにしましょう。
このとき、皮膚をゴシゴシ擦る必要はありません。逆に、強く擦りすぎて皮膚に傷ができると、そこから白癬菌が侵入しやすくなるので危険です。
基本的には、毎日しっかりとお風呂に入っていれば問題ありません。
水虫を恐れるあまり、過剰に洗いすぎていると足の炎症を起こしたり、皮膚がふやけて余計に水虫に感染しやすくなったりします。
また、洗った後の足は柔らかいタオルで丁寧に水気を拭き取りましょう。水虫の原因菌となる白癬菌はカビの一種です。そのため、ジメジメとした湿度の高い場所を好みます。
お風呂あがりやシャワー後には、足の指の間も優しく拭って乾燥させるよう心がけることが、水虫発症の予防につながります。
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また、皮膚科で処方された抗真菌内服薬と併用すれば、短期間での爪水虫治療を実現できるはずです。
まとめ
足の指の爪水虫は、そのまま放置していても自然治癒することはありません。そのため、抗真菌薬やクリーム、外用薬などを使いながら水虫の原因菌(カビ)を少しずつ退治する必要があるのです。
爪水虫は通常の足水虫と比較すると、完治に時間がかかる感染症ではありますが、根気よく治療を続けていれば必ず治すことが可能です。
人前で堂々と素足を見せられるよう、今すぐにでも爪水虫の治療を始めてみてはいかがでしょうか。